ガートナージャパンは10月26日、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みに関する調査結果を発表した。最多の取り組みは「既存ビジネスのコスト削減やオペレーションの効率化」の79.3%で、新規ビジネス関連も半数以上を占めた。
調査は、5月に国内企業でITシステムの構築・導入・保守・運用・サービス委託先選定に関与する担当者を対象に実施した。有効回答は400社。8つのDXテーマの選択肢を回答者に提示して、取り組み状況を尋ねたという。
取り組みの上位3つは、「既存ビジネスのコスト削減やオペレーションの効率化」(79.3%)、「データやITインフラなどの基盤の整備」(73.3%)、「既存商品やサービスの機能強化・品質改善」(69.8%)で、既存ビジネスに関するものが目立った。:ZDNET
DXの取り組みが幅広い分野に拡大する中、データやITインフラなどの基盤の整備がより重要な課題に
ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、国内のデジタル・トランスフォーメーションの取り組みに関する調査結果を発表しました。
Gartnerは2023年5月に、国内企業のITシステムの構築/導入/保守/運用および、サービス委託先の選定に関与している担当者を対象に調査を実施しました (有効回答400社)。本調査で、予め8つの分野を提示してデジタル・トランスフォーメーション (DX) の取り組み状況を尋ねたところ、最も高い割合の取り組みは、「既存ビジネスのコスト削減やオペレーションの効率化」(79.3%) で、次に「データやITインフラ等の基盤の整備」(73.3%) でした。また、既存ビジネスの改善だけでなく、「新規事業等の新しい価値提案の創出」を目的としたデジタル・トランスフォーメーションに取り組む企業も60%を超え、日本企業のDXの取り組みが、既存ビジネスに対するものにとどまらず、幅広い分野に広がっていることが改めて確認できました (図1参照)。
図1. デジタル・トランスフォーメーションの取り組み状況
出典:Gartner (2023年10月)
シニア プリンシパル アナリストの中尾 晃政は次のように述べています。「既存ビジネスに対する取り組みに次いで、『新規事業等の新しい価値提案の創出』『新しい顧客ターゲットやチャネルの拡大』などが上位に挙がった一因としては、ここ数年間のコロナ禍で、顧客のビジネスを取り巻く環境や消費者行動が変化したことが挙げられます。テクノロジを活用しビジネスや顧客を獲得するための新たなビジネスの仕組み作りは、今後も日本企業にとって重要なテーマになるでしょう」
「一方、今回の調査で『データやITインフラ等の基盤の整備』に取り組んでいると回答した企業が70%を超えたことは注目すべき点です。DXの取り組みが新しいビジネスへと広がる中、既存システムに蓄積されたデータ活用にとどまらず、新規ビジネスの立ち上げに伴った新しいデータとの連携機会が増えていることが考えられます。それらのデータを連携させるためには、各部門でサイロ化された既存システムとの連携基盤の構築が必要となります。既存の仕組みで実現が難しい場合は、クラウドへの移行なども含めた抜本的なデータ連携基盤の整備も必要となります。DXを進める日本企業にとって、『データやITインフラ等の基盤の整備』は、より一層重要な課題になったと言えます」
本調査で、DXの8つの取り組み分野ごとに、主導する組織についても尋ねたところ、「データやITインフラ等の基盤の整備」を筆頭に「既存ビジネスのコスト削減やオペレーションの効率化」など、5つの項目でIT部門が主導している割合が高くなりました。一方、「新規事業等の新しい価値提案の創出」「新しい顧客ターゲットやチャネルの拡大」「新しい収益流 (収益を得る仕組み) の確立」の3つの項目については、事業部門等の既存の非IT部門が主導している割合が最も高くなりました (図2参照)。
図2. DXの取り組み組織フォーメーション
出典:Gartner (2023年10月)
IT部門が主導する分野が多かった1つの要因としては、既存や新規ビジネスに関連するデータやITインフラ等の基盤の整備の必要性が増してきた点が考えられます。一方、事業部門等の既存の非IT部門が主導している割合が高い分野は、今後のビジネスモデル自体の変革に主眼が置かれた取り組みであるため、実事業部門が主導することは自然な流れといえます。
中尾は次のように述べています。「今後、事業運営の柔軟性や迅速性を高めるため、自ら『デジタル』の能力を補完し、クラウド活用し、その運営を含めすべて対応することも考えられます。重要な役割を担うIT部門としては今後、主導する事業部門等への側方支援の必要性や、支援のための組織フォーメーションをどのように構築するかといった検討も進めていく必要があります」
DXの取り組みにおける内製/外製化の現状は、社外のリソースを活用している企業が依然として多い
本調査では、DXの取り組みにおける内製/外製の状況について、DXに関連するシステムの企画、設計・開発・実装、実装後のシステムの運用・管理・保守の3つの工程で尋ねました。その結果、各工程で、大部分を社内のリソースで対応できている企業は全体の20~30%にとどまりました。一方、程度に関係なく社外のリソースを活用している企業の割合は、各工程で60%以上となりました。
上流の企画工程では、社内の知見にとどまらず、積極的に社外の知見や新たなアイデアを取り入れ、デジタル・ビジネスを進めようとする企業の意図がうかがえます。一方で、システムの設計、開発、実装以降の工程では、社外の人材リソース/ITベンダーに頼らざるを得ない側面もあるとみられます。
中尾は次のように述べています。「『デジタル』の取り組みでは、クラウド、AI、アナリティクスといった導入において、新しい技術スキルを保有する人材が社内では不足しており、社外リソースに頼らざるを得ない現状もみてとれます。社外のリソースを活用している企業には、補完的な活用にとどまる企業と、全面的に活用する企業に分かれますが、社外リソースの活用については、社内のIT部門の立ち位置、必要なIT人材の不足状況など、企業の状況によって左右されます。今後の内製/外製化の方向性は、分野によって、より内製に振れる分野とそうでない分野でめりはりのついたソーシングになっていくことが考えられます」
「こうした変化に伴って、社外リソースの活用の仕方も変化していくと予想されます。現在、社外のリソース活用においては、多くの企業で『既存システムの開発や運用等で付き合いのあるITベンダー』に頼っている状況がうかがえます。特に、大手ITベンダーは資金力があり、新しいサービスの拡充やDXに関連する人材の補充、また、M&Aを含めた新しい技術への投資にも余念がありません。こうしたベンダーのケイパビリティをうまく活用するメリットは大きいといえます。しかし、大手ITベンダーも万能ではありません。多岐に広がっているデジタルの取り組み分野によっては、ベンダーの能力を見極めると同時に、これまでのベンダーとの関係性の見直しや、多彩なソーシング・オプションの活用を検討する可能性も出てくるでしょう。企業にとって、DXの推進とともに、こうした社外リソースの活用やベンダーの管理を強化することは、ますます重要になります」
Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「デジタル・トランスフォーメーションを推進する日本企業のソーシングの『今』」で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products
Gartnerは11月13~15日に、Gartner IT Symposium/Xpoをグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて開催します。2023年度は、「可能性を解き放て」をテーマに、将来の方向性、成功に向けた戦略、重要な実行策の3つのトラックからなるプログラムをご用意しています。主要な15のトピック領域における最新のテクノロジ、戦略、そしてリーダーシップに関する知見を提供し、CIOとリーダーシップ・チームにとっての最重要課題を取り上げます。コンファレンスのニュースと最新情報は、X (旧Twitter) でご覧いただけます (#GartnerSYM)。
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