「ERP」という言葉に初めて出会った方でも、最後まで読めばERPについて理解できる、そんな記事です。ERPの概要や基幹システムとの違い、導入のメリット、導入に際しての障壁など、ERPパッケージ開発経験を持つ筆者がわかりやすく解説します。
目次
・ERPとは? 250文字でわかりやすく解説
・ERPはどうして必要?
ERPの由来
・基幹システムとERPの違い
・ERPの主な機能
・ERPの種類
クラウド型ERP/オンプレミス型ERP
クラウド型ERPのメリット・デメリット
オンプレミス型ERPのメリット・デメリット
ERPパッケージ/フルスクラッチ型ERP
ERPパッケージのメリット・デメリット
フルスクラッチ型ERPのメリット・デメリット
・ERPのメリット・デメリット
・ERPのメリット
・ERPのデメリット
・ERPの選び方
・ERP導入の流れ
・これからの時代に求められる、業種特化型ERP
・ERPに関するよくあるご質問
ERPとは? 250文字でわかりやすく解説
ERPは「Enterprise Resource Planning」の頭文字をとっており、直訳すると「企業資源計画」。ERPとは、企業の持つ資源=「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を一か所に集めて管理し、有効活用するという考え方、またはそれを実現するためのシステムを指します。
ERPはどうして必要?
「ヒト」を管理する人事管理、「モノ」を管理する在庫管理、「カネ」を管理する販売管理など、1つのシステムでまとめて管理することで、一つひとつバラバラのシステムを使うよりも全体の効率化が可能になります。

ここからは、さらに詳しくERPについて解説していきます。「とりあえずERPについて概要を理解したい」「ERPを図解でまとめて知りたい」という方は、こちらから【図解】8ページでざっくりわかるERPの選び方をダウンロードください!
ERPの由来
ERP(Enterprise Resource Planning)は「Material Requirements Planning」(資材所要量計画)という生産管理用語から派生しています。生産管理における資材を、企業全体におけるヒト・モノ・カネといった経営資源に拡大した考え方がERPの本来の意味です。
基幹システムとERPの違い
基幹システムとは企業の主要な業務を遂行するのに使われる業務システムのことを指し、生産管理・販売管理・在庫管理など、それぞれが独立したシステムとして作られています。
ERPと基幹システムとの違いは、ERPの「企業資源を有効活用する考え方」に基づいたシステムかどうかという点で分けられます。
ERPは企業資源を有効活用するために複数のシステムが統合され、データを一元管理できる形になっており、「統合基幹業務システム」と呼ばれることもあります。詳しくは下記の関連記事をご覧ください。

ERPの主な機能

- 人事・給与管理
- 販売管理
- 生産管理
- 購買管理
- 会計管理
- 営業管理
ERPには上記のような機能が統合されていることが多いです。ERPベンダーによって得意としている業界が異なるため機能にも差があり、例えばシステム開発業・コンサル業・クリエイティブ業などのプロジェクト型業務に特化しているERPの場合、「プロジェクト管理」の機能が充実しているなどの違いがあります。
ERPの種類
クラウド型ERP/オンプレミス型ERP
ERPにはクラウド型ERPと、オンプレミス型ERPの2種類があり、それぞれERPのシステムをどこに構築するかを指しています。
- クラウド型ERPインターネット上にシステムを構築し、ユーザーがそこにアクセスする
- オンプレミス型ERP自社のサーバー上に構築して利用する

クラウド型ERPのメリット・デメリット
クラウドERPはその名の通りクラウド上にシステムを構築します。そのため、自社でサーバーを保持する必要がなく、初期費用・ランニングコスト共に、コスト削減することが可能であるというメリットがあります。
クラウドERPのデメリットとしては、自社のデータをクラウド上にアップロードするため、サーバーが外部から攻撃される可能性など、セキュリティ面での不安が挙げられます。
ベンダーを選ぶ際にはセキュリティ面で信頼できるかどうかを確認しましょう。
オンプレミス型ERPのメリット・デメリット
オンプレミスとは、企業が情報システムの設備を自社内に保有し、運用することを指します。英語では「on-premise」と表記され、この時の「premise」は構内・店内といったような意味を表しており、「on-premise」は直訳すると「敷地内に」という意味になります。
クラウド型のサービスやシステムが登場し普及するまではオンプレミス型ERPが主流だったという経緯もあり、今でも多くの企業がオンプレミス型のERPを使用しています。
オンプレミス型ERPの最大のメリットはカスタマイズのしやすさです。自社環境にシステムを構築するため、既存のシステムとの連携が容易であることが、オンプレミス型が選ばれている理由の1つです。
その反面、初期費用や導入コストが多くかかるというデメリットもあります。
現在導入しているシステムとの兼ね合いや、長期的に見たコストパフォーマンスまで考えて、クラウド型ERPとオンプレミス型ERP、どちらを選ぶのかを考える必要があります。

ERPパッケージ/フルスクラッチ型ERP
前述の通り、”どこに作るか”がクラウド型/オンプレミス型の違いですが、“どのように作るか”がERPパッケージ/フルスクラッチ型ERPの違いです。スーツに例えると、ERPパッケージは紳士服売り場に出来上がった状態で並んでいるプレタポルテ(既製服)のスーツ、フルスクラッチ型のERPは生地選びから始めるオーダーメイドのスーツ、と言ったところです。
- ERPパッケージ必要であろう機能をあらかじめ備えている形のERP
- フルスクラッチ型ERPゼロからすべてを作る受託開発形のERP

ERPパッケージのメリット・デメリット
ERPパッケージのメリットは、導入までの期間とコストを抑えられることです。一般的に必要とされている機能があらかじめ備えられており、開発期間が短くて済むことや、オーダーメイドで機能を作らなくて良い分コストを抑えることができます。
反対に、パッケージになっていることで、自社の独自の慣習や業務に対応しきれない可能性があることがデメリットとして挙げられます。
フルスクラッチ型ERPのメリット・デメリット
フルスクラッチ型のERPのメリットは、自社に合わせてオーダメイドのシステムを構築できる点にあります。日本の企業には独自の慣習が多くあり、パッケージ型のソフトウェアでは対応できないことが多々ありますが、フルスクラッチ型であればそのような心配がありません。
一方、オーダーメイドで設計から行う分、開発期間と費用の面でパッケージ型よりも多くのコストがかかるデメリットがあります。どうしても必要なパッケージでは対応できない業務がある場合以外は、パッケージ型で事足りるケースが多いです。
昨今では日本製のERPパッケージも多く登場しており、日本企業独自の慣習にも対応できる製品が多くあります。また、自社独自の業務そのものが本当に最適な方法であるのか、ERP導入の際に省みて業務の方を改善する方法もあります。
ERPのメリット・デメリット
ERPは、これまでばらばらだった業務システムを統合することで、全社単位での業務効率化や経営情報の活用をしよう、という理念のもと作られており、ばらばらだった機能が統合されたことで、企業全体での情報の一元管理が可能になるというメリットがあります。
ERPを導入することで得られるメリットは、デメリットよりはるかに大きいと言えます。ただ、ERPは決して安価なものではなく、選定や導入の過程での負担は小さくはありません。
ここではERPを導入するメリットと、導入までの障壁=デメリットをまとめてお話しします。
ERPのメリット | 情報の一元管理が可能にリアルタイム経営の実現成功企業のベストプラクティスを取り入れられる内部統制に効果を発揮 |
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ERPのデメリット | システム選定の難しさ導入・保守費用が高価であることが多い実際に活用されるための社内啓蒙が必要 |
ERPのメリット
- 情報の一元管理が可能に
- リアルタイム経営の実現
- 成功企業のベストプラクティスを取り入れられる
- 内部統制に効果を発揮
情報の一元管理が可能に
ERPは、従来のシステムでは業務ごとに分断されていたマスターデータ(製品や取引先など)や取引データ(各種伝票など)を、”統合データベース”という考え方での一元管理を実現しています。
統合データベースでは、ある業務処理を実行するのと同時に、その業務に関連するデータがすべて更新されます。
例えば、出荷の際には、関係している販売、在庫、会計などのデータが部門を横断して、すべてリアルタイムに更新されます。
このような、ひとつの動き(モノやカネ)に連動して、関連するデータがリアルタイムに更新される、整合性のとれた仕組みによって、従来のシステム間・部門間の連携の悪さを解消できます。
リアルタイム経営の実現
変化の早いビジネス環境の中で、情報のタイムリー性は非常に重要です。経営の資源(ヒト・モノ・カネ)について「見える化」された最新情報を共有し、いつでも利用できることが、経営者の意思決定を支援し、また、企業全体の最適化を促進させます。
成功企業のベストプラクティスを取り入れられる
ERPパッケージのベンダーは、それぞれの業種において最も標準的で基準となるビジネスプロセスの知識・ノウハウを持っています。業種別のソリューション・テンプレートなど様々な形で蓄積されているノウハウは「ベストプラクティス」と呼ばれており、成功企業のベストプラクティスを自社に比較・活用できる点はERPソリューション導入の大きな目的のひとつでもあります。また多くの企業に導入実績のあるERPソリューションは成功企業の事例を生かした有効なサービスともいえます。
内部統制に効果を発揮
ERPを内部統制の角度から見ると、以下の2つがもっとも有効です。
- 統合データベースでの一元管理によるデータの整合性(重複処理や漏れ)
- 申請・承認の管理(アクセス権限、承認管理)
ERPは全世界で利用されていることを考えると信頼性も高く、有効に活用することで内部統制が強力にサポートされます。
ERPのデメリット
- システム選定の難しさ
- 導入・保守費用が高価であることが多い
- 実際に活用されるための社内啓蒙が必要
システム選定の難しさ
ERPには日本国内だけでなく海外のベンダーも多くあり、価格や種類は多岐に渡ります。その中から自社に合ったシステムを選定するのは大変骨の折れる作業であり、そもそも何から手をつけたら良いのかわからず途方に暮れるのではないでしょうか。世の中にはERPの導入コンサルティングという職業もあるので、いかに専門的な知識が必要で難しい作業であるかがわかります。
導入・保守費用が高価であることが多い
世の中には大きなものから小規模なものまで色々なシステムがありますが、ERPは様々な業務をカバーする、規模の大きな部類のシステムです。そのため、初期費用として数百万円程度必要になるのが相場であり、導入後にもライセンス費用や保守費用、バージョンアップなどに費用がかかる場合があります。
実際に活用されるための社内啓蒙が必要
新しくERPを導入しシステムを構築しても、社内ではこれまで使っていた何らかのシステムやツールがあるはずです。ERP導入の目的は、情報の一元管理による業務の効率化であることが多いかと思いますが、前提として社員一人ひとりが正しい情報を入力しなければ情報の一元管理が実現しません。日々の業務の中で慣れ親しんだシステムから新しいやり方に変える時には、社内で反発が起きるのが常です。ERPの導入はトップダウンで行われることが多いですが、導入の矢面に立つ担当者の方の仕事として、ERP導入の意図や意義、会社全体で行うプロジェクトである旨を啓蒙していく必要があります。
ERPの選び方
選定が難しいとされるERPですが、以下のポイントを押さえることで自社に適したERP選びが可能になります。
まず始めに、システム導入によって解決したい社内の課題を洗い出しましょう。ERP導入自体が目的となってしまわないように、現状の経営管理や業務プロセス、現行システムの問題点を整理したうえで、導入目的を明確にすることが大切です。
そのうえで、
- 検討しているシステムのターゲットに自社が当てはまるか
- 自社に必要な機能を備えているか
- システムの設計思想やビジョンに共感できるか
- 効果に見合った導入コストであるか
を検討しましょう。
また、各部門の業務に必要なシステム・ツールと連携ができるかどうかも重要なポイントとなります。例えば、経理部門で使用する財務会計ソフトとスムーズな連携ができれば、より一層の業務効率化を図ることが可能です。
詳しくは、企業の人数規模別の選び方をまとめたこちらの記事をご覧ください。

ERP導入の流れ
ERP導入の流れは、自社の業務内容に合わせて構築する「フルスクラッチ型」と機能があらかじめ備わっている「パッケージ型」で異なりますが、今回はパッケージ型の導入に絞って解説します。
ERP導入におけるフェーズは、
- システムの検討や決定といった「導入序盤フェーズ」
- システムの切替準備、社内周知を行う「導入中盤フェーズ」
- システム切替やデータ移行を行う「導入終盤フェーズ」
- システム導入後のサポートを行う「システムカットオーバー」
の4つに大きく分かれます。
多くの場合、「導入プロジェクトメンバー(PJメンバー)」を選定し、プロジェクトを進めていきます。プロジェクトには、「プロジェクトの責任者」、「プロジェクトリーダー」、「ERPのモジュールの担当者」をアサインします。
導入時は、自社とシステムベンダーが連携を取りながら進めていくため、コスト面や機能について双方で認識の齟齬がないか確認を怠らないようにすることが重要です。フェーズが進むにつれて導入プロジェクトメンバーだけでなく、社内システム担当、社内展開のための各部署のキーマン、現場メンバーなど関わる人数が増えていきます。
導入のポイントや注意点など、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

これからの時代に求められる、業種特化型ERP
1960年代、第三次産業(サービス業)の占める割合は3割程度でした。しかし、その3割程度だった第三次産業も、今では7割を超えるほどに増加しています。
時代の流れに伴い、今までにないスピードでビジネス環境はめまぐるしい変化を続けています。半世紀前は製造業に特化されたシステムが必要とされていました。しかし、今必要とされているのは第三次産業に特化されたシステムです。そして、その変化のスピードについていける情報システムが必要とされています。
「第三次産業に特化」し、「SaaSで常に進化し続ける」をコンセプトにしたERP、それが『ZAC』です。『ZAC』はこれからのビジネスを支えるERPとして、進化を続けます。
ERPに関するよくあるご質問
QERPは何の頭文字ですか?A「Enterprise Resource Planning」の頭文字です。直訳すると「企業資源計画」です。企業のもつ資源「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を計画、つまり有効活用する考え方、またはそのシステムを指します。詳しくはERPとは? 250文字でわかりやすく解説をご覧ください。QERPはどのように比較すべき?Aサーバーをクラウドで持つかどうかや、パッケージを利用するか、スクラッチ開発するかなど、会社の規模や要件によってポイントが異なります。また、特定の業種に多く事例を持つベンダーもいますので、Webサイトなどで自社に近い事例があるかどうかもポイントです。詳しくはERPの種類をご覧ください。

【図解】8ページでざっくりわかるERPの選び方
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この記事の筆者
株式会社オロ ZAC デジタルマーケティングチーム チーム長
犬塚 菜々美
過去にシステムエンジニアとしてERPパッケージソフトの開発に3年半従事。その際に身につけた業務知識やERPの知識を活かし、株式会社オロでクラウドERP「ZAC」のマーケティングチームの一員として活動。すべての人がよりよく働き、暮らしていける世の中の実現のため、生産性向上やダイバーシティについての情報を発信する。この筆者の記事一覧

この記事の監修者
株式会社オロ クラウドソリューション事業部 カスタマーサクセスグループ コンサルタント / 中小企業診断士
渡辺 篤史
2011年入社以降、クラウドERP「ZAC」の導入支援を担当。現在は主に大規模案件を中心に要件定義や導入支援を行っている。導入支援チームのマネジメントも行う。中小企業の業務プロセスに通じる。