慶應義塾大学の坪田一男名誉教授らの研究グループは、強膜(いわゆる白目の部分)に生じる小胞体ストレスが近視進行の中心的役割を担っており、その制御により近視進行を抑制できることを解明した。

 近視は目の前後軸の長さ(眼軸長)が伸びることで生じる。これにより目の後ろに物理的負荷が加わり、網膜剥離や黄斑症、視神経症などの失明につながりうる合併症を引き起こす。また眼軸長が長い人は加齢に伴う視覚障害のリスクが大幅に増加するが、眼軸長をわずかでも短く保つとリスクがかなり軽減されるため、過剰な眼軸長伸長を抑制する必要性が認識されてきた。

 今回研究グループは、近視モデルマウスの強膜を、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、強膜の線維芽細胞に、折り畳み不全のタンパク質が蓄積したときに認められる粗面小胞体の膨張が観察された。この状態は小胞体ストレスと呼ばれる。

 そこで、小胞体ストレスを減弱させる低分子化合物「4-PBA」を点眼投与すると、眼軸長伸長の抑制と屈折度数(マイナスになると近視)低下の抑制を認め、近視が抑制された。一方、薬剤(ツニカマイシン)により強膜小胞体ストレスを誘導したところ、眼軸の伸長と屈折度数の低下を認め、強膜小胞体ストレスの誘導により近視が生じた。これにより、強膜小胞体ストレスが近視発症・進行の機序であり、小胞体ストレスの制御により効果的に近視進行を抑制できることが示された。

 近視は患者数が多く、視覚障害の危険性があるが、効果的かつ安全に眼軸伸長を抑制する薬剤は現存しない。今回の研究で見出した4-PBAは近視の治療を可能とする薬剤の創出につながり、社会的なインパクトが極めて大きいとしている。

論文情報:【Nature Communications】Scleral PERK and ATF6 as targets of myopic axial elongation of mouse eyes

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