新型コロナウイルスのオミクロン変異株の系統で「BA.4」と「BA.5」と呼ばれる派生型が、世界中で急速に広がり、新たに感染者の急増を引き起こしている。
南アフリカで最初に特定された「BA.4」と「BA.5」は、間もなく欧米で主流になるかもしれないと、専門家たちは話している。
「BA.4」と「BA.5」とは
新型コロナウイルスはその登場以来、変異を繰り返している。新型コロナウイルスの「変異株」と呼ばれる、遺伝情報を変化させた新バージョンが、出現し続けている。
これまでに、「アルファ」、「デルタ」、「オミクロン」とそれぞれ名前が付けられた変異株が相次ぎ出現し、大規模な感染の波を引き起こしてきた。
多くの専門家が現在心配しているのは、「BA.4」と「BA.5」と呼ばれる。昨年冬の感染拡大の原因となったオミクロン変異株にきわめて近い派生型だ。
世界保健機関(WHO)は今年3月、「BA.4」と「BA.5」を監視対象に追加。欧州では懸念される変異型に指定されている。
どこで広がっているのか
「BA.4」と「BA.5」は今年初めに南アフリカで伝播(でんぱ)しているのが見つかり、今ではほかの変異型よりはるかに急速に広がっている様子だ。
欧州ではほとんどの国に入り込んでおり、間もなく他の新型コロナウイルスの型よりも多く広がって主流となる見通し。すでにポルトガルでは、「BA.5」が主流になっている。
アメリカでは、2つの派生型による感染者が急増しているという。
イギリスでも、「BA.4」と「BA.5」に起因する感染者の増加の兆しが見え始めている。
オーストラリアでも、2つの派生型の感染者が報告されている。
危険の程度は?
しかし、「BA.4」と「BA.5」の拡散による各国への影響はまだ不透明だ。
他の新型コロナウイルスの型に比べて、特に毒性が強いとは思われていない。
多くの人はすでに、感染やワクチン接種を通じて、身体がコロナウイルスに対する一定の免疫を獲得している。このおかげで、感染に伴う重症化リスクは全般的に以前より少なくなっている。
それでも、「BA.4」と「BA.5」は、以前のものより容易に拡散しているように見える。
大勢の免疫が薄れているというのが要因の一部だが、ウイルスの変異の仕方にもよる。
さらに、多くの国が感染対策の規制を解除しているため、前より大勢が移動し、他人と交わっていることもある。これはウイルスにとって、伝播する機会の拡大を意味する。
「BA.4」と「BA.5」は、オミクロン株のほかの種類に最近感染したばかりだという人も、感染するようだ。
感染者が一気に増えれば、入院が必要となる人も増え、亡くなる人も増えるかもしれない。
自衛方法は
新型コロナウイルスの他の変異株と同様、重症化リスクが特に高いのは高齢者や、深刻な基礎疾患のある人たちだ。
すでにあるワクチンは「BA.4」と「BA.5」に完璧にマッチしたものではないが、それでも最善の防御方法であることには変わりはない。
ワクチンはデルタ、アルファ、ベータ、ガンマを含む、他の主な変異に対しても、重症化リスクを減らしてきた。
医師たちは、既存の変異株と新しく出現する変異株に対して最大限の防御を獲得するため、推奨回数の接種を受けるのが不可欠だと話す。
変異株用の新しいワクチンはいつ
新型コロナウイルスの変異株に対応して改良されたワクチンは、すでに開発中で、試験段階にある。
メーカーは製造量を急きょ増やすこともできるし、各国の規制当局は承認手続きをどう加速させるかすでに協議している。
変異株はなぜ出現する?
ウイルスは自分自身を複製することで増殖するが、毎回必ず完璧に複製されるとは限らない。複製過程の誤差が遺伝子の組み換えにつながり、新しい変異が生まれる。
この変異によってウイルスが生存しやすくなる場合、変異した型は増えることになる。
宿主となる私たち人間の中で新型コロナウイルスが複製する機会が増えれば増えるほど、変異が発生する機会も増えるわけだ。
(英語記事 BA.4 and BA.5 Omicron: How worried should we be?)
https://www.bbc.com/news/health-55659820