企業におけるDX推進のためには、レガシーシステムが足枷になるとの話がある。そのため企業は、レガシーシステムを急ぎモダナイズする必要に迫られている。実際のところ富士通は、自社のメインフレームの販売を2030年度に終息し、2035年度には保守も終了する。さらにUNIXサーバーについても、2029年度に販売を終息し2034年度には保守を終了すると表明している。このようなベンダーの対応からも、レガシーシステムからは急ぎ脱却する必要があると考えられる。
メインフレームはDXの足枷なのか?
レガシーシステムの代表とも言えるのが、富士通も撤退するメインフレームだろう。しかしながらDXのためにインフラをモダナイズする際に、むしろメインフレームが基幹系業務のワークロードを支える重要な要素となると考えているのがIBMだ。基幹系システムに蓄積されるデータは、DXのためにも重要なものであり、それを安全に活用できるようにするにはメインフレームに新しいインターフェイスを用意しクラウドネイティブなアプリケーションと連携できることが求められる。
基幹系システムの中にデータがフリーズしている状況であれば、メインフレームは確かにDXの足枷になる。一方でメインフレームにオープンなインターフェイスが用意されていれば、基幹系システムに求められるミッションクリティカルで高い安全性が求められるワークロードと、そこから生まれる貴重なデータの活用の両立が可能だと言うのがIBMの主張なのだ。
メインフレームの堅牢性、安定性、拡張性と、クラウドネイティブなアプリケーションの俊敏性と柔軟性。これら全てを提供することが、企業におけるシステム全体のモダナイズにつながる。そのためにIBMでは、メインフレームであるIBM Zの進化を続けている。2017年9月にはIBM z14を出荷、オンチップの暗号化アクセラレータによる全方位暗号化を実現した。2019年9月にはz15を提供し、オンチップのデータ圧縮とソートのアクセラレータを搭載、さらにデータセンターでの設置を容易にする19インチラックサイズ化も実現した。
そして2022年5月31日には、最新のIBM z16の出荷が始まる。今回のz16の特長は、意思決定の速度を高めるAI推論と自動化、サイバー攻撃に対応できるセキュアなシステム、そしてハイブリッド・アプローチによるモダナイゼーションの推進の3つだ。AI、機械学習技術の活用は、今や珍しくない。しかしながら通常は基幹系システムなどで蓄積されるトランザクションシステムなどのデータを一旦抽出し、それに対してAIや機械学習の技術を適用し予測などを行う。この活用方法にはスピードやレイテンシーの課題があり、一部の業務でしか活用できていないのが現状だ。
もっとリアルタイムに業務処理の中でAIを使えるようにすれば、AIや機械学習の適用範囲は大きく拡がるだろう。そのためにはトランザクション処理の最中に、AIを使えるようにする必要がある。z16ではオンチップによるAI推論が可能となり、基幹系システムのトランザクション処理の最中にAIを適用できる。これにより異常や不正などを後から検知するのではなく、トランザクション処理の中で見つけることで不正などの予防につなげることも可能となる。
もともと高い堅牢性を誇るメインフレームだが、z16はセキュリティ面においても大きく進化した。それが、業界初の耐量子暗号機能の提供だ。現状の暗号化の技術では、数年後に実用化される量子コンピュータを用いることで容易に解読される可能性がある。保険など長期に亘りデータを安全に保管する必要がある業界では、量子コンピュータでも解読できない耐量子暗号が必要なのだ。それにいち早く対応できるのが、z16と言うわけだ。
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