日本郵船、商船三井らも参画の「TradeLens」とは2016年9月、世界有数の海運事業者であるマースク(Maersk)は、IBMとともにブロックチェーンに投資することを発表した。これが、TradeLensである。TradeLensは、2018年8月に正式稼働を始め、2019年1月時点で、年間約2000万個、世界を流通するコンテナにおける20%もの情報をカバーしている。TradeLensには海運事業者のほか、各国の港、オーストラリア、バーレーン、カナダ、サウジアラビアなど各国の税関、保険会社などの金融機関が参加している。日本からは、川崎汽船、商船三井、日本郵船の定期コンテナ船事業を統合した「Ocean Network Express」が、TradeLensに参加している。貨物は生産国から出荷されてから長い旅を続けるが、TradeLensでは、旅を続ける貨物に関する最新情報が常にアップデートされる。アップデートを行うのは、海運事業者らTradeLensに参加する企業だ。参加者は自社のシステムからAPIを通じてTradeLensに情報を提供する。と同時に、他の参加者がアップデートした最新の情報を受け取ることができるという仕組みである。TradeLensに接続するためのAPIや、TradeLensでやりとりされる情報を活用するためのアプリケーションは、一部公開されているものもあるが、参加者自身が開発する必要がある。こうした事情から、TradeLensを直接利用するのは、先に挙げた海運事業者、港、税関など、貿易とその関連業務を生業としている貿易関連事業者が中心となっている。将来的には不明だが、現時点では、荷主等貿易を必要とするメーカーや商社、小売などは、直接TradeLensに参加するのではなく、貿易関連事業者を介してTradeLensの恩恵を受けている。
