「mobi」は東京都渋谷区など国内3地区でサービスを提供しているAIオンデマンド交通サービス。定額制での利用が可能で、スマートフォンから予約して乗れる。写真は2021年12月22日の「au新モビリティサービス発表会」
KDDIは、観光・交通などの事業を手掛けるWILLERと合弁会社を設立し、オンデマンド型の定額モビリティーサービス「mobi」を共同で提供すると発表した。同サービスはWILLERが既に提供していたものだが、KDDIが相乗りする理由はどこにあるのか。また事業の成功には何が求められるだろうか。
WILLERの「mobi」、定額制で半径2km以内の移動をカバー
スマートフォンなどから予約し、AIで最適な走行ルートを設定して指定した場所まで手軽に移動できる、乗り合い型の交通サービス「AIオンデマンド交通」。これは国土交通省が日本版MaaS(Mobility as a Service)の基盤整備の一環として力を入れているもので、少子高齢化で公共交通の維持が難しくなっている地方を主体にサービス提供の事例が増えつつあるようだ。
その事例の1つが、旅行や高速バスなどの交通事業を手掛けるWILLERが展開する「mobi(モビ)」だ。mobiは2021年6月にサービスを開始したAIオンデマンド交通サービスで、現在は京都府京丹後市、東京都渋谷区、愛知県名古屋市千種区の3カ所で提供している。アプリとサービスをWILLERが提供し、実際の運行は各地域の交通会社などが担っている。
スマートフォンから予約でき、AIで最適な走行ルートを算出するという点は他のサービスと大きく変わらないのだが、1回当たり300円の従量制だけでなく、30日当たり5000円の定額料金で、1人であれば乗り放題になる点が大きな特徴といえるだろう。高齢者の移動を支えるという視点から見ると5000円という金額は高額にも感じるが、料金に関しては今後のサービス提供で得た利用者の意見を基にプラン追加なども検討する考えのようだ。
そのmobiがこだわっているのが、半径2km圏内の近距離移動をストレスなくできるようにすることであり、保育園やスーパーなど、日常生活で欠かせない移動手段を提供することに力を入れて移動によるコミュニティーの活性化を目指しているという。地方だけでなく都市部でもサービスを提供しているのには、高齢者だけでなく、ベビーカーなどを伴うことがあり移動に難しさを伴う子育て世代なども対象にしたい狙いがあるといえよう。
一方で、例えば自宅からバス停まで移動し、そこからはバスで移動するなど、他の公共交通と接続して利便性を高めていきたいとしている。あくまで近距離にターゲットを絞ることで、既存の公共交通とはある程度すみ分けを図っていく方針のようだ。