事業とともにITシステムを成長させる以上、技術的負債の発生は避けられない。負債を一気に返済するにせよ地道に返すにせよ、自社にとって適切な水準に抑える取り組みが不可欠だ。無策のまま開発を続ければ、ブラックボックス化の末に待つのは「破産」である。
 東京都大田区、蒲田にあるビルの一室。2022年4月初め、初々しい面持ちの男女十数人が研修に臨んでいた。いずれも日本生命保険のIT部門に所属する、入社2~3年目の社員だ。グループのIT企業、ニッセイ情報テクノロジー(NIT)に出向している。

 日本生命は2022年3月にこの集合研修施設を開設した。2022年4月の新入社員のうち、日本生命本体のIT部門配属は9人、NITは90人。新人を中心としたIT担当の若手社員を同施設に集め、ITの基礎を教え込む。
実はこの研修施設には隠れたミッションがある。システムの老朽化やITスキルの断絶が引き起こす、改修コストの膨張やトラブルの増大――。いわゆる「技術的負債」と呼ばれる問題に対処する人材を、長期にわたって育成する拠点となることだ。古く根深い問題に手を打つべく、新人の段階からその種をまいておこうというわけだ。

 背景にあるのは経済産業省が指摘した「2025年の崖」だ。技術的負債が足かせになり、新規事業開発や業務改革といったデジタルトランスフォーメーション(DX)が滞る事態をそう呼ぶ。
 崖を回避するには今から人材を手当てしておかなければ手遅れになる。こんな危機感が日本生命をIT人材の早期育成に突き動かした。感染拡大の「第7波」すら懸念される新型コロナ禍のなか、学生時代の終盤をオンライン生活で過ごした新入社員が対面の研修を待望していることも手伝い、あえて同施設の開設に踏み切った。
 技術的負債に対処できる人材を育てるに当たり、日本生命は80あまりのカリキュラムを設けた。その内容は、入門的な内容から基本的なシステム設計・開発手法、クラウド、セキュリティー、日本生命の独自システムの処理形態まで多種多様。「基幹システムを自社開発しているので、カリキュラムを自前で柔軟に改修できるのが強み。システムの内製力を高めて、(技術的負債に対処するために必要なスキルを)継承していける水準を維持する」(前田泰成デジタル推進室室長)。

 日本生命は同カリキュラムをグループ全体に広げる考えだ。「保険会社としてシステムをしっかり保守運用する能力を培い、先端技術も適宜取り入れる必要がある。グループ各社が人材に関して抱える同様の悩みに応えたい」。前田室長はこう意気込む。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02066/051300001/

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