タコのマークを社名ロゴにあしらった、英国のエネルギー小売りスタートアップが今秋日本に進出する。ロンドンに本社を構える英オクトパスエナジーだ。参加交流型サイト(SNS)などの販促やデジタル技術にたけ、4年間で180万超の顧客を獲得。英国で今もっとも勢いのあるエネルギー会社だ。2016年の小売り全面自由化まで規制に守られてきた日本の電力小売市場は、世界基準の力を持った海外勢と競争する時代に入る。東京ガスは20年12月にオクトパスと提携すると発表し、2月に共同出資で新会社「TGオクトパスエナジー」を設立した。同社の有沢洋平取締役部門長はオクトパスについて「料金の透明性が高く、顧客対応が丁寧。再生可能エネルギーなどクリーンな電力を販売する」と強みを分析する。英国の電力・ガス小売りは98年に自由化されたが、当初は新規参入組が撤退し、ビッグ6と呼ばれる大手エネルギー会社6社が市場を押さえていた。だが、14年頃から新興企業が存在感を増し、現在は20%以上のシェアを握る。新興企業の中で成長スピードが一番速いのがオクトパスだ。市場連動型や単価固定など数百種類のメニューを持ち、顧客のニーズに合わせて提供する。顧客の利用状況に応じて、もっと得になる別のメニューを逆に提案することもある。このようなサービスを可能にしているのがITプラットフォーム(基盤)「クラーケン」だ。北欧に伝わる海の怪物の名に由来する。「電気、ガス、サービス、SNSなど世の中のエネルギー事業者に必要なシステムをすべて1パッケージで持っている」(有沢取締役)。顧客からの各種問い合わせに一つのシステムで対応でき、さまざまなメニューの作成も可能になる。今秋から日本でサービスを始めるが、詳細は詰めている段階だ。東京ガスとは別に、TGオクトパスエナジーとしてブランド展開する。顧客を取り合う構図もありうるが、東京ガスで電力販売に携わった有沢取締役は「東ガスの電力小売りは一戸建て住宅が中心で、マンションまで手が届いていない。(オクトパスは)関東だけでなく全国展開できるため、トータルで伸ばせる」とみる。電力会社はもはや電力だけを供給して収益を稼ぐビジネスモデルではない。中部電力は最近2年の株主総会で定款の事業内容を相次ぎ変更した。19年にデータプラットフォーム事業やコミュニティサポートインフラ事業、20年は金融、保険サービスなどが加わった。4月から保険販売や食料品のネット販売などを手がける新会社を三菱商事と共同で設立し、事業を始める。顧客との距離を縮め、選ばれる電力会社を目指す―。この命題に四国電力が出した一つの答えが、「地域に内在する社会課題の解決」(長井啓介社長)だ。少子高齢化の課題に対し、農業振興や生活支援サービスの新事業を立ち上げ、地域活性化を図ろうとする。エネルギーは暮らしに欠かせないインフラだが、供給事業者は顧客に付加価値を提供できなければ市場から取り残される。地域電力会社や新電力、新興企業がサービスを競い合い、より良いものが顧客に選ばれる。

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