TikTokは長年にわたり、アプリ内の「For You」ページに表示されるコンテンツが、アルゴリズムで表示されていると説明してきた。
しかし、フォーブスが入手した内部資料と、関係者の証言によってTikTokとその親会社のバイトダンスの社員が密かに特定の動画を選び、意図的に再生回数を増やすブースト行為を行っていることが明らかになった。この施策は、社内で「ヒーティング」と呼ばれている。
「ヒーティングは、動画をFor Youフィードにブーストし、一定の動画再生回数を達成するものである」と、MINT Heating Playbookと題されたTikTokの内部文書には記載されている。「ヒーティングされた動画の総動画再生数は、1日の総動画再生数の1~2%程度と大きな割合を占めており、全体のコアメトリクスに大きな影響を与える可能性がある」との記述もある。
すべてのハイテク大手は、ある程度はユーザーに特定の投稿をレコメンドしているが、彼らは通常、その行為に明確なラベル付けを行っている。しかし、TikTokはこれまで、ブーストを行っていることを公にしてこなかった。
情報筋がフォーブスに語ったところによると、TikTokはインフルエンサーやブランドに便宜を図り、動画の視聴回数を増加させるために、しばしばブーストを行ってきたという。このことは、彼らがビジネス上の関係を持つ一部のインフルエンサーやブランドが、一般ユーザーを犠牲にして利益を得ている可能性を示唆している。
スタンフォード大学ロースクールの教授で、コロンビア大学の言論の自由を守る団体、ナイト修正第一研究所(Knight First Amendment Institute)の上級研究員であるEvelyn Douekは、「ソーシャルメディアにおいては、誰もが平等な機会を得られると考えられているが、それは必ずしも正しいとは言えない。一部のパートナーシップが優位に立つという、旧来の権力構造がここにもある」と述べている。
関係者がヒーティングの権限を悪用する場合もある模様だ。フォーブスが確認した書類で、社員が自分自身や個人的つながりのある人物のアカウントをブーストしたことが判明しており、その結果、300万回を超える閲覧数を集めたアカウントも存在するとされる。
フォーブスが、ヒーティングが誰にどのように利用されているかをTikTokの広報担当者のJamie Favazzaに質問したところ、「当社は、エクスペリエンスを多様化し、著名人や新人クリエイターをコミュニティに紹介するためにいくつかの動画をプロモートしている」との回答だった。さらに、ヒーティングの権限を持つのは米国を拠点とする数名のメンバーのみで、それらのコンテンツがFor Youのフィードに占める割合は0.002%程度という。orbes
中国政府の介入の危険は?
一方、別の関係者は、ヒーティングが著名なクリエーターとのコラボレーションを目立たせるためにも使われており、そのような場面では、「アルゴリズムが適切な視聴者を見つけるのを手助けする役割を果たす」と説明した。
人間によるキュレーションは、有害なコンテンツや誤情報の排除に役立つが、企業が政治的な嗜好をユーザーに押し付けているという主張にもつながっている。
TikTokの場合は、中国政府がバイトダンスに対し特定の話題をプッシュする、または抑制するよう強制することが可能だという疑惑が持たれている。TikTokは以前、中国政府に批判的なコンテンツを検閲したことを認めており、昨年はバイトダンスの元社員がBuzzFeed Newsの取材に対し、現在は廃止されたニュースアプリのTopBuzzが米国ユーザー向けに「中国寄りのメッセージ」をニュースフィードに送り込んでいたことを明かしていた。しかし、バイトダンスはこの報道を否定した。
TikTokの広報は、中国にいる社員がコンテンツをブーストしたり、中国政府や国営メディアのコンテンツをブーストしたことがあるかという質問に対する回答を拒否した。
TikTokは現在、外国人所有の企業がもたらす国家安全保障上のリスクを評価する米財務省の対米外国投資委員会(CFIUS)との契約締結に近づいているとされている。
しかし、TikTokの禁止を求める議員も増えている。
バイトダンスは先月、北京在住の幹部が率いる従業員チームが、内部情報をリークした社員を特定するために、フォーブスの記者を含むジャーナリストの位置情報を監視していたことを認めた。同社は、この監視に関わった社員を解雇した。
https://forbesjapan.com/articles/detail/60300