NECはこのほど、世界最大のプロジェクトマネジメント推進団体である米プロジェクトマネジメント協会(PMI)と戦略提携を結んだ。PMIが提供するアジャイル開発の推進などに役立つ知識体系「Disciplined Agile(ディシプリンド・アジャイル、DA)」をNECが活用。システム開発のコンサルティングや、DA関連の資格認定研修などの事業を展開する。
NECとPMIによると、DAに関する戦略提携はアジア・太平洋地域では初めて。DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためにアジャイル開発を導入する企業や、さらに踏み込んで意思決定など企業活動全体のアジリティー(俊敏性)を高めようとする企業が日本でも増えつつある。NECはこうした顧客企業を支援するビジネスにDAを活用する狙いだ。
アジャイル手法の最適な組み合わせ方法を解説
そもそもDAとはどのようなものか。PMIのBen Breen(ベン・ブリーン)アジア太平洋地区マネージングディレクター 建設部門 グローバル責任者は、「企業が自社の状況に最適なアジャイルのプラクティス(実践ノウハウ)を選ぶために役立つツールキットだ」と説明する。
アジャイル開発にはスクラムやエクストリームプログラミング(XP)、カンバン、米Scaled Agile(スケールド・アジャイル)が開発した大規模向けの「SAFe(Scaled Agile Framework)」など様々なフレームワークが存在する。DAはこれらのフレームワークのプラクティスを、業務目的や組織の規模、契約条件といった状況に応じて効果的に組み合わせる方法を紹介する指南書のようなものだとする。
アジャイル開発の各種フレームワークは、有用なプラクティスをそろえる。ただし、開発過程のどのタイミングで、どのプラクティスを活用するとよいのかを判断するのは難しい。DAを参照すれば、自身の状況に最適なフレームワークやプラクティスを組み合わせて使いやすくなる。海外では英Barclays(バークレイズ)銀行などが活用しているという。
特定のフレームワークだけではニーズに応えきれない
DAの内容は、PMIが提供するサービス「DA Browser」から確認できる。アジャイル開発のフレームワークやプラクティスだけでなく、トヨタ生産方式のような現場改善手法や新規事業の企画、システムやサービスのライフサイクル管理などに役立つ手法も幅広く盛り込んでいることが分かる。「開発プロジェクトはもちろん、経営層や事業部門など企業全体の活動にもアジャイルの考え方を適用できる」とPMIのブリーン氏は話す。
この特徴にNECは注目した。DXに取り組む顧客企業を支援するうえでは、ソフト開発だけでなく企業全体のアジリティーを高める提案が必要になる。しかも顧客企業の経営環境やプロジェクトの状況は異なり、「特定のフレームワークだけでは顧客企業のニーズに応えきれない」(NECの福岡俊一SI事業推進統括執行役員)という課題があった。
例えば、小規模な開発プロジェクトにスクラムを採用して成果が出たとしても、大規模な案件にも適用しようとしたり、経営や事業部門まで巻き込んだ活動に広げたりすると壁にぶつかりやすい。小規模プロジェクトと状況が変わり、スクラムのプラクティスだけでは解決できないガバナンスなどの問題が出てくるためだ。
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