スマホは買い換えサイクルが長くなり、世界的に出荷台数が減少している。そんな中で成長しているのが折りたたみスマホだ。高額なため、販売台数自体はまだ全体の1~2%程度と少ないものの、前年比52%増と高い成長を見せており、サムスン電子のほか、主要な中国メーカーが折りたたみスマホを提供している。2023年はグーグルも「Pixel Fold」を発売するとうわさされており、競争が激化することが予想される。折りたたみスマホはスマホ市場を活性化させるデバイスとなるだろうか。
折りたたみスマホやタブレット向けのOS「Android 12L」を搭載したサムスンの最新折りたたみスマホ「Galaxy Z Fold4」。画面下部にショートカットアイコンが並ぶタスクバーができ、マルチタスク操作がしやすくなった
(写真:筆者撮影)<目次>
ハイスペック端末が伸び悩む中、急成長する折りたたみスマホ市場
スマホの機能的進化が停滞しているといわれて久しい。新機種が出ても目立った新機能が搭載されないため、買い換えサイクルは3~4年前後へと長くなった。
調査会社IDCによると、2022年の世界のスマホ出荷台数は前年より11.3%も減少し12億1000万台程度。日本では通信契約とひも付けて端末を購入する場合の割引に制限が設けられたことで、高額なハイスペック端末が売れなくなっているという声もある。
そんな中、世界的に大きく成長しているのが折りたたみスマホだ。香港に本社を置く調査会社カウンターポイントによると、2023年度の世界の折りたたみスマホの出荷台数は、前年比52%増の2270万台に達すると予測されている。
世界の折りたたみスマホ出荷台数の予想は右肩上がり
(出典:カウンターポイント)
折りたたみスマホが本格的に登場したのは2019年
最初に折りたたみスマホが登場したのは2018年終盤。中国・深圳に本社を構えるロヨルが発表した「FlexPai」が、世界初の折りたたみスマホだ。翌年、サムスン電子が本のように開く谷折りの「Galaxy Fold」を、ファーウェイが山折りの「Mate X」を発表してからは2社の折りたたみスマホが注目を集めた。
世界初の折りたたみスマホ、ロヨルのFlexPai。かなり厚みがあった
(写真:筆者撮影)
日本では2019年10月にGalaxy Foldがau独占で販売された。ただ、取扱店舗がauオンラインショップとKDDI・沖縄セルラーの直営店、一部量販店に限られ、取り扱い台数はごくわずかだった。一括価格は税込みで約24万円。折り畳めるディスプレーはインパクトがあったが、使い勝手がこなれていなかったという印象が残っている。また、日本のスマホに必須といわれる防水防じん、おサイフケータイにも対応していなかった。
価格はともかく、防水やおサイフケータイに対応して手に取りやすくなったのは2021年に登場した「Galaxy Z Fold3」からだ。
auに加えてドコモも取り扱いを始め、高額だが先進的なスマホとして、多彩な使い方を望むユーザーが購入した。とはいえ、ユーザーはごく一部のマニアといっていいだろう。職場や学校、通勤電車内で折りたたみスマホを使っている人を見かけることは、ほとんどないという人が多いのではないか。
2023年は折りたたみスマホが増える
日本国内で折りたたみスマホを提供しているメーカーは、Galaxy Z Fold/Flipシリーズを提供するサムスン電子、2021年に「Razr 5G」を出したモトローラ程度だが、お隣の中国ではそれらに加え、ファーウェイ、シャオミ、オッポ、オナー、ビボといったメーカーも折りたたみスマホを開発し、販売している。一部の中国メーカーはヨーロッパ市場にも本格参入すると見られる。日本ではミドルレンジを中心に展開しているオッポ、シャオミが折りたたみスマホを日本で展開するかも、23年は注目したいところだ。
オッポが22年12月に発表した「OPPO Find N2」
(出典:オッポの中国版Webサイト)
カウンターポイントのシニアアナリストジェーン・パーク氏は、23年の折りたたみスマホ市場について、参加OEMが増加することによって競争が激化すると予想している。22年初旬に、グーグルが折りたたみスマホやタブレット向けOS「Android 12L」をリリースしたことで、折りたたみスマホを開発しやすくなっている状況も後押ししているかもしれない。
ネットかいわいのうわさでは、そのグーグルも折りたたみスマホ「Pixel Fold」を23年夏ごろに発売するとされ、予想画像や予想スペックが出回っている。一方、Appleについては折りたたみiPhoneを開発することが以前から期待されてはいるが、パーク氏は「短期的に(Appleが折りたたみスマホを出すとは)予測していない」とコメントしている。
折りたたみスマホは国内スマホ市場の起爆剤になるか?
参入メーカーが増えて競争が激化すれば価格が下がる。折りたたみスマホの最大のネックは価格だが、価格が下がればこれまで手を出せなかった人も購入するようになるだろう。縦折りのフリップ型は主に女性をターゲットにした小型折りたたみスマホで、価格も抑えめなので広がっていくかもしれない。
Galaxy Z Fold3やFold4を使っている知り合いは、その快適さを熱心に語っている。折り畳んだ状態は初代と比較してずいぶんスリムになり、開くと現れる大画面は見やすく、たたみじわも抑えられてきているという。ノートパソコンのように開いて机に置き、ビデオ会議をしたりスクリーンに投影された資料を背面カメラで撮影したりしているのを見ると、確かに便利そうだと感じる。
ただ、最大のネックは20万円を超える価格だ。また、個人的には、折りたたみスマホは折りたたみスマホならではの使い勝手をより高めていかないと、幅広く普及するのは難しいのではないかと感じている。
現状、ハイエンドスマホは、30倍ズームや1億以上の画素、カメラブランドとの協業などでカメラ性能をきわめるか、あるいは折りたたみという新しいスタイルで先進性をアピールする方向だ。一方、高機能でも際立った特徴を押し出せない10万円前後の製品は、以前ほど強い存在感を示せなくなっている。実際に数が出るのはミドルレンジ以下のモデルだ。この構造は23年も変わることはないだろうと思っている。
それとも、中国メーカーの買いやすい折りたたみスマホが日本国内に入ってきて、電車内で使っている人をちょくちょく見かけるような状態になるだろうか。そうなれば面白い展開になりそうだが。https://www.sbbit.jp/article/cont1/105828