「大学ファンドの運用について」2023 年度の運用実績要旨
(科学技術振興機構 喜田昌和 運用業務担当理事)
• JST のミッションについて説明。
1.長期運用の観点から運用を高度化させて高い利回りを出すこと。
2.毎年資金拠出を安定的に果たす。特に2つ目は国策であり、必ず達成しなければならない。
• 2023 年度に 10 兆円規模での運用を開始し、2023 年度のトータルリターンは収益額+9,934 億円、収益率+10%となった。実現損益である当期純利益は+1,167 億円となり、2022 年度利益剰余金 681 億円との合計額(1,800 億円程度)をベース財源として、国際卓越研究大学等への助成額が別途決定される。(p.2)
• 為替について円安が進行している。大学ファンドは円ベースで投資を行っているため、円安が資金運用パフォーマンスにプラスに寄与している。株式については、米国がドライバーであった。(米国株式主導で、グローバル株式が上昇した。)(p.3,4)
• 株式について、2022 年度下がったところから戻した。債券については株式と動きが異なり、株式が調整すると債券がプラスになる。しばらくその状態が続いていたが、インフレ退治のため利上げを行った影響で、3年間マイナスが続いている。ドル円について、基本的にはストレスがかかると円高になるが、今回はかなり円安が進んでいる。(p.5)
• 運用に関しては相関の組み合わせがより重要になる。本来は株式と債券は逆の動きをする逆相関になるが、利上げの影響により両方の価値が下がり、足元では両方とも上昇する順相関という特徴的な動き方をしている。(p.6)
• 2023 年運用実績での資産構成割合について、グローバル債券を多めにとっており、レファレンス・ポートフォリオと比較するとかなりリスクを抑えた形で運用。(p.7)
• 収益額は約 9,900 億円、収益率は+10%、資産種別で見てもプラスになっている。債券について、価格は下がっているが、為替の円安効果によりプラスになっている。(p.8)
• アクティブ運用を使うと標榜し、方針に組み込んでいる。オルタナティブはすべてアクティブ運用。(p.9)
• オルタナティブ投資はコミットしてから期間 3~5 年で投資するため、投資進捗(残高)がコミットメント残高よりかなり少ない状態がしばらく続く。(p.10)
• レファレンス・ポートフォリオと比較した際のリスク量の推移について、現状は半分程度。昨年度3月末から徐々に右上に上昇しているが、これは株式比率を高めているため。レファレンス・ポートフォリオを踏まえて、将来的に最適であろう基本ポートフォリオを作っており、そこに向かいながらポートフォリオを作成している。また、政府からの 10 兆円のうち、資本は 1.1 兆円であるため、資本の状況を意識しながらリスクをコントロールしていきたい。
(p.11)
• 運用の8割強が、欧米を中心とした外貨資産であるため、債券の金利リスク・オルタナティブを含めた株式のリスク、為替リスクが同程度になるよう、為替について半分のリスクをヘッジしている。(p.12)
• 11 兆のうち 8.9 兆が外貨建てであり、これに 49%為替ヘッジをしてリスクをコントロールしている。(p.13)
• 利下げや大統領選挙等あるなかで、状況に応じて早めにリスクテイクをするなど着実に運用して参りたい。
https://www.mext.go.jp/content/20240906-mxt_gakkikan-000037475_1-1-2.pdf