本年2月14日から18日にかけて、IAEA(国際原子力機関)の職員及び国際専門家が日本を訪れ、東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の安全性に関するレビューが行われました。本日、IAEAがこのレビューを通じた見解を取りまとめた報告書が公表されました。
1.概要
本年2月のALPS処理水の安全性に関するIAEAレビューは、IAEAとの間で昨年7月に署名されたALPS処理水の取扱いに係る包括的な協力の枠組みに関する付託事項(TOR)に基づき実施されたものです。IAEAレビューは、原子力分野の専門機関であるIAEAの職員及び国際専門家からなるIAEAタスクフォースにより、ALPS処理水の放出前・中・後にわたり実施されます。

今回公表された報告書では、主に、昨年12月に東京電力が原子力規制委員会に提出した実施計画変更認可申請書や東京電力が昨年11月に公表した ALPS処理水の海洋放出に係る人及び環境への放射線影響評価報告書の内容を踏まえて、国際安全基準に基づき本年2月に実施されたレビューにおける見解について記されています。

参考 IAEAタスクフォースには、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、韓国、マーシャル諸島、ロシア、米国、英国、ベトナム出身の国際専門家が含まれる。
2.報告書のポイント 
※IAEA報告書からの引用(一部要約)有
放出されるALPS処理水の性状、放出プロセスの安全性、人と環境の保護に関する放射線影響等について、以下の8つの技術的事項について確認が行われました。

横断的な要求事項と勧告事項
ALPS処理水/放出水の性状
放出管理のシステムとプロセスに関する安全性
放射線影響評価
放出に関する規制管理と認可
ALPS処理水と環境のモニタリング
利害関係者の関与
職業的な放射線防護
報告書では、技術的事項毎に、IAEAタスクフォースと経済産業省及び東京電力との議論のポイントや、所見の概要が記載されています。

実施計画の主な内容である関連設備の安全性については、東京電力により詳細な分析がなされ、設備の設計と運用手順の中で的確に予防措置が講じられていることが確認されました。放射線影響評価については、包括的で詳細な分析が講じられており、人の放射線影響は日本の規制当局が定める水準より大幅に小さいことが確認されました。

また、IAEAタスクフォースは、ALPS処理水の放出を行うために相当量の作業と分析が実施されているが、この成果は、IAEAの安全基準の文脈で関連する要求事項への準拠を示すために、文書で明確に説明される必要があると指摘しました。
主な確認事項
(1)ALPS処理水の性状
IAEAタスクフォースは、全α検査(参考1)を用いた測定方法は、放射線影響評価や放出が規制基準を満たしているか確認するための日常的な分析を行う上で十分に保守的(過小評価とならないようリスクを高めに見積もる評価方法)であることに合意した。

IAEAタスクフォースは、ALPS処理水の性状について、十分に保守的であるが、さらに現実的な形で定義することが重要である点、及びALPS処理水の性状が明確に定義されれば、利害関係者からの理解も得られやすい点を指摘した。

東京電力は、より現実的な想定に基づいた再評価を行う計画(参考2)があると述べた。IAEAタスクフォースは、東京電力が、十分に保守的でありつつも現実的な放射線核種の選定を行い、放射線影響評価を改訂する計画であることに同意した。
参考1 α線放出核種の濃度を測定し、異常の有無を検査する方法。
参考2 東京電力が昨年11月に公表した放射線影響評価報告書では、安全評価をより厳しく行うため、半減期が短く既に有意に存在していないと考えられる放射性核種も存在すると想定して計算を行った。
(2)放出管理のシステムとプロセスに関する安全性
IAEAタスクフォースは、東京電力が放出を制御するシステムの故障に繋がる可能性のある事象(単一故障)と起こりうる結果を、順序立てられた規則正しい方法で特定したことを認めた。この評価の結果として、東京電力は設備の設計と運用手順の中で的確に予防措置を講じた。

IAEAタスクフォースは、東京電力において、安全評価のために考慮されたすべての側面(方法論および使用されたデータを含む)が、安全評価において十分に文書化されることが期待されるとした。

IAEAタスクフォースは、東電が安全性評価について、詳細で包括的な方法で膨大な分析を行ったことを認めた。また、多くの起こりうる単一故障について考慮した上でALPS処理水放出の設計基準を検討したことを認めた。

IAEAタスクフォースは、すべての故障モードを考慮した包括的な評価を行い、希釈前のALPS処理水が放出される可能性のある要因を特定することは重要であり、放射線影響評価に部分的に示されてはいるが、システムの設計基準を正当化するために説明を追加する必要があると言及した。
(3)放射線影響評価
IAEAタスクフォースは、東京電力の行った放射線影響評価が保守的な仮定を用いていて、代表的個人に与える放射線量は非常に低いこと、また、規制当局が定める水準より大幅に小さいと予測していることを確認した。さらにIAEAタスクフォースは、この放射線影響評価が包括的で詳細な分析に基づいていることを認めた。

IAEAタスクフォースは、放射線影響評価に基づけば、有機結合トリチウムを考慮しても線量評価に影響を与える可能性は低いものの、評価の中で考慮に含める旨を言及することが重要であることを認めた。

IAEAタスクフォースは、設備や運用の安全性評価の一環として、様々な故障を想定し、その可能性を低減するための安全機能や操業上の措置が特定されていることに言及した。また実施可能な防護策や緩和策を考慮せずに計算をしてみることが重要であると指摘をし、東京電力はこれを踏まえて評価を行うことに合意した。

IAEAタスクフォースと東京電力は、この放射線影響評価の読み手がその内容をよく理解できるように、使用された手法やデータについてさらに明確な説明を行う必要があることに合意し、東京電力はこれを踏まえ放射線影響評価を改訂することに同意した。
(4)放出に関する規制管理と認可
IAEAタスクフォースは、放射線影響評価から導かれるトリチウムが放出可能な量の上限は、年間22兆ベクレルよりも多い量となることを指摘した。IAEAタスクフォースは、この点は、東京電力が公衆の保護の観点で最適な対応をとっていることを示す手助けとなり、人及び環境の保護に関して利害関係者の信頼醸成につながり、年間22兆ベクレルを超える放出であっても線量拘束値を満たすという前向きなメッセージとなるだろうとしている。
3. IAEA報告書を受けた対応
IAEAタスクフォースからの指摘は、原子力規制庁に補正申請された実施計画や人及び環境への放射線影響評価報告書の見直しに反映され、実施計画や人及び環境への放射線影響評価報告書の内容の一層の充実が図られました。

引き続き、放出計画の進捗に応じて、IAEAレビューを通じて国際的な安全基準に照らした確認を継続し、安全確保に万全を期していく予定です。

4.関連資料
IAEAのプレスリリース(英文)外部リンク
https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-releases-first-report-on-safety-of-planned-water-discharge-from-fukushima-daiichi-site
IAEAのプレスリリース(仮訳)(PDF形式:379KB)PDFファイル
https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220429002/20220429002-2.pdf
IAEAの報告書(英文)外部リンク
https://www.iaea.org/sites/default/files/report_1_review_mission_to_tepco_and_meti.pdf
IAEA報告書の構成、サマリー(仮訳)(PDF形式:448KB)PDFファイル
https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220429002/20220429002-3.pdf
大臣談話
https://www.meti.go.jp/speeches/danwa/2022/20220429.html

担当
資源エネルギー庁
原子力発電所事故収束対応室調整官 田辺
担当者: 泉井、飯塚、安良岡

電話:03-3501-1511(内線 4441)
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