Forbes JAPAN2020年1月号の特集「日本の起業家 BEST10」では、海外機関投資家からの資金流入をはじめ、続々とユニコーンが誕生するなど、ゲームチェンジさなかの「新たなフェーズ」に突入した日本のスタートアップ・エコシステムの全貌について掲載している。ウェブ版では「スタートアップ・トレンド」と称して、著名投資家20人以上へのインタビューを連載形式で掲載していく。
Vol.2では、グロービス・キャピタル・パートナーズ・代表パートナーの今野穣、インキュベイトファンド・セネラルパートナーの村田祐介へのインタビューを掲載する。(Vol.1はこちら)
「カテゴリーキラー」か、否か
━━ グロービス・キャピタル・パートナーズ・代表パートナー 今野穣
2020年に大きな変化、21年はさらに大きな変化が起きた。20年は、スタートアップの事業、ビジネス、エコシステムにとってコロナ禍が「追い風」になった。必然的にDX(デジタルトランスフォーメーション)化、デジタル化をせざるをえない環境になり、進化が早まったからだ。それを見て注目度が上がり、グロースファンドを中心に、政府系ファンド、上場株も扱うクロスオーバーファンドからの資金流入が増えた。
21年はそれに加え、各ラウンドの調達が、大型化した。13〜14年時点と比較すると、3〜5倍になっている。シリーズAラウンドが5〜10億円、同Bラウンドが10〜30億円、同Cラウンドが30〜50億円規模と、全ラウンドで調達金額が増加している。大型調達できる企業と、できない企業の二極化が進んでいくだろう。
SmartHR、キャディ、アンドパッド、スマートニュースのような「カテゴリーキラー」には大型の資金が集まる。カテゴリーキラーであれば、「いま」ではなく「将来」の企業価値に着目すれば、現在の評価額のギャップは小さくなるため、資金調達がしやすくなる。一方、そう見えない企業は、シリーズCラウンド以降のセレクションが厳しくなる。
エコシステム全体としてポジティブなのは、ビジョナルの2491億円IPO(新規株式公開、上場初日終値)、米ペイパルによるPaidyの3000億円M&A(合併・買収)だ。上場時でのユニコーン超えは久しぶりで、超大型M&Aはエポックメーキングだ。こうした事例が増加すると、投資家側の思考も「この規模に成長するだろう」と変わり、シリーズA、B、Cラウンドに対する寛容度はあがっていく。
今後については「多産多死」の米国型に近づいていくだろう。起業が旺盛になり、事業テーマも拡大し、資金も流入されているが、おそらく「突き抜ける」企業にお金がよっていく。次に起きることは、M&Aの増加だ。カテゴリーキラーはオーガニックな成長に加えて、多くの資金を集めて、M&Aをしていくケースが増えていくだろう。時間軸で言うと、少なくとも大型調達したスタートアップの買い意欲は「レディ」だ。
資金調達環境については、日本がよくなったというよりは、米国の加熱により、日本が割安と見られているからだろう。実態として、実力があがったとまでは言い切れない。マクロ環境に左右されるため、景気の上下による膨張収縮はあるだろうが、資金の割り当てのなかで、スタートアップ、テクノロジーというのは景気変動に左右されにくいのではないか。バイアウト市場が年間1兆円と言われているが、スタートアップも同規模になっていないとおかしい。(談)「資金調達金額1兆円」時代へ
━━ インキュベイトファンド・セネラルパートナー 村田祐介
日本の「スタートアップ・エコシステムの進化」の象徴は、創業者、CxO(最高責任者)クラスの「質」向上だ。シリアルCxOも増えたことが大きいだろう。
なかでも、CFO(最高財務責任者)の質があきらかに向上している。セルサイド、バイサイドの市場関係者がCFOとしてスタートアップに参画し、(揶揄として言われた)「IPOゴール」ではなく、中長期的な資本政策まで含めてIPO戦略を立てる企業が多く、資金調達の仕方が明らかに変わった。機関投資家とのコミュニケーションをはじめ、資金調達の考え方、手法が、従来と全く異なるレベルにアップデートされた。
VC側の変化では、この2年で機関投資家の資金を扱えるGP(ゼネラルパートナー)が増えた。そのため、資金の「性質」が変わってきている。金融商品として高いパフォーマンスを出すという目線感がより明らかになった。
日本ベンチャーキャピタル協会と英プレキンで調査している機関投資家向けのパフォーマンス指標「国内パフォーマンスベンチマーク」により、自分たちの「結果」の可視化、グローバルな比較ができるようになり、VCの経営方針、運営方針がより磨かれている。
21年の象徴的な事例は、スタートアップ側、VC側ともに「海外投資家からの資金調達」だ。著名海外投資家から無名まで一気に参入が増え、グロースキャピタルというステージが日本にも誕生した。海外VC、海外上場株投資家による投資がこれまでの年数件程度から、明らかに増えた1年だった。
海外機関投資家から見えない存在だった日本のスタートアップが「見える化」されたと言える。冒頭のCFOの質的変化にもつながるが、上場準備の早い段階から機関投資家と接点を持つということが新常識になってきた。一方で、我々もそうだが、海外機関投資家からLP出資を受けるVCも増えた。海外機関投資家からファンドレイズできるプレイヤーの登場も新たな傾向であり、進化を表していると言えるだろう。
今後、スタートアップは「超二極化」する。海外機関投資家や海外トップティアVCと対話して大型資金調達するスタートアップと、そうでないスタートアップに分かれるだろう。CBインサイツ調査によると、世界における21年第3四半期のスタートアップ資金調達金額は、過去最高の1582億ドル。前年同期770億ドルから105%増と、世界同時多発的に多くの資金がスタートアップに流れている。
米国では現在、資金調達金額全体の7割強をVC以外の投資家が占める。未上場株式という新たなアセットクラスが魅力的なパフォーマンスが出ているという事実はテーパリング(量的緩和の縮小)が加速しても変わらないだろう。クロスオーバー投資家、プライベートエクイティ、ヘッジファンド、グロソブ系ファンド、年金系ファンドのような上場株投資家のスタートアップへの直接投資は進んでいく。日本でも、この動きは止まらないだろう。
米国で極端にバリエーションが高騰しているため、割安感がある日本にグローバル投資家が投資するという傾向は、今後も続き、「常態化」すると思っている。来年には、日本のスタートアップ資金調達金額が「1兆円の壁」を越えると思っているが、内訳は海外投資家の割合が大きいという構造になるのではないか。(談)
※※※本連載は、発売中のForbes JAPAN2022年1月号の特集「起業家ランキング2022」と連動した企画です。今後、著名投資家へのインタビューを連載形式で随時公開を予定しています。(Vol.1はこちら)https://forbesjapan.com/articles/detail/44734/2/1/1

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